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訴訟ファイナンスの配当率に対するポートフォリオファイナンスの影響

ここ2~3年の訴訟ファイナンスの大きな潮流の変化の一つにポートフォリオファイナンスの広がりが挙げられる。訴訟ファイナンスは、単一の訴訟へのファイナンスとポートフォリオファイナンスに分けられるようになった。単一の訴訟に対するファイナンスは、その訴訟の特有なリスクとその勝敗の帰趨に完全に左右される。一方、訴訟ファイナンスをポートフォリオとして組成する場合は、対象となる複数訴訟の結果は総和となり損益は共通されることになる。その資金提供対象が法律事務所であろうと企業であろうとポートフォリオの対象全休のパフォーマンスにより投資結果が決まる。WestFleet’s 2019 Buyer’s Guideによれば米国における訴訟ファイナンスの供与コミットメントの62%に上るようになってきており、そのうち法律事務所に対するものが47%、企業に対するものが15%となっている。

 

それではなぜポートフォリオファイナンスが訴訟ファイナンスで活用されるようになったのであろうか?

 

1. 第一の大きな要因は、単一の訴訟を対象とした訴訟ファイナンスから始まった訴訟ファイナンスの対象は、より複雑な案件を対象とするようになるとともにより大きな資金を提供するようになったことである。まず、単一の訴訟で資金提供を行い、経験を深めるとともに、ポートフォリオファイナンスにより資金提供の規模を拡大していくのである。
2. 第二の要因は、訴訟ファイナンスへの資金提供の資金源の拡大である。訴訟ファイナンスの組成者は、幅広く募った投資家からより効率よく投資することが要請されるようになった。ポートフォリオファイナンスは、巨額の投資資金をできるだけ早く投資し、回収することができる。単一の訴訟を多数集めながら訴訟ファイナンス案件をいくつも組成するよりポートフォリオファイナンスは効率的なのである。
3. 第三に、訴訟ファイナンスの問題は、資金投資のスピードの遅さである。ファンドマネージャーはリスクを回避するため慎重に投資対象を選ぶ。この慎重さは資金効率を悪くし、またマネージメントフィーを高くし、結果、投資効率を悪くする。一方で、ポートフォリオファイナンスは、資金提供者が巨額の資金提供をコミットし、資金提供の実行を早める。多くの場合、既に法律事務所が着手した訴訟の費用を肩代わりするのである。この意味では、ポートフォリオは法律事務所から生まれる訴訟が、訴訟ファイアンス資金提供者の投資対象に変わるのである。
4. 今や、法律事務所は、(1)訴訟を起こすこと、すなわち、訴訟ファイナンスの組成で一番難しく高価なサービスでもある、及び、(2)複数の訴訟を近代的なポートフォリオ理論でプールにすることについて自らのもつ価値を見出し始めている。先進的な法律事務所は、新しく市場に生まれた訴訟ファイアンスの資金源と自らの力で組成する訴訟ポートフォリオとを合理的なコストで結合させるのである。
5. 訴訟ファイナンスについての法律業界での認知度が高まるにつれポートフォリオ対象となる訴訟を多数抱える原告弁護士たちにも認知が進んできている。同時に企業側でもポートフォリオファイアンスについての認知度を高まっている。

 

それでは投資家にとり訴訟ファイナンスのポートフォリオ投資はどのような意味を持つのであろうか。

 

Burford’s 2018 capital markets eventからの引用
「単一の訴訟対象からポートフォリオファイナンスへ組成を移行するに際し、投資家は、それで配当は下がるのか?上がるのか?と聞いた」
このコメントに対する回答としては、リスクの観点からはポートフォリオファイナンスは単一訴訟案件よりも優れた結果を生むとはいえる。ところが、Burfordの過去の業績から見ると単一訴訟に対するファイナンスのほうが、ポートフォリオファイナンスよりも配当が高いのである。 一方でBurfordの開示書類ではこうした一部の単一訴訟案件の成功事例は彼らのコア戦略、すなわち、訴訟ファイナンスはベンチャーキャピタルに類似するものである、を歪めるものと述べている。もっともすべてのポートフォリオファイナンスについてその中の成功事例については着目すべきである。
しかしながら、多数のポートフォリオファイナンスを検証してみると、単一の訴訟対象よりもポートフォリオファイナンスが優位であるというよりも、むしろ、当該ファンドマネージャーの投資方針、投資規模や対象訴訟の性質などの方が配当性向に関連している。ファンドマネージャーにより非常に安定した配当を生み出しているポートフォリオもあればその逆もあるのである。すなわち、あなたがベンチャーキャピタル投資やLOB投資で検討するようにあなたのリスク判断にかかってくるのである。

 

公のデータがないのでポートフォリオファイナンスが単一の訴訟ファイナンスよりリスクを勘案した配当で優れているとは必ずしも言えない。しかし、単一訴訟の場合には勝敗リスクが重要なインパクトを持つのに対してポートフォリオファイナンスはそれを相殺できる。むしろ、ポートフォリオファイナンスに訴訟を提供する法律事務所や企業がどのくらい見返りを要求しているかが問題となる。
私は一般的にいえばポートフォリオファイナンスは、変動率の観点からは単一訴訟ファイナンスよりも優れるが、配当率からすれば単一訴訟ファイナンスに軍配を上げる。但し、それは変動率のリスクのためなのである。しかし、両者を同じような訴訟の種類、期間、裁判管轄地、訴額などで比べることは現実にはできないのである。

 

January 15, 2020 Edwards Truant
https://litigationfinancejournal.com/implications-of-portfolio-financings-on-litigation-finance-returns/