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企業は、訴訟ファイナンスの必要性に囚われるべきではない

訴訟ファインス(正確に言えば、訴訟や仲裁費用のファイナンス)は、これまであまり知られてこなかった。しかし、どのように企業が自身の持つ法的請求権を金銭化するのか、或いは、そのための資金をテーラーメードで調達するのか関心が払われるべきである。その意味で、訴訟ファイナンスは、「必要性」の観点からではなく、「選択肢」として企業の有するこれまで資産と考えられなかった法的請求権を実現する手段として認識されるべきである。

 

典型的事例として、一つの訴訟案件を対象とする訴訟ファイナンスがあるが、業界の進化と共に、複数の訴訟案件をまとめて対象とするほか、被告になる案件も含めて対象とされるようになってきている。この動きは、訴訟ファイナンスが、財務内容の貧弱な企業を対象とするものから、優れた財務内容の企業を対象とするコーポレートファイナンスとなってきていることを意味している。

 

訴訟案件をポートフォリオとして訴訟ファイナンスの対象とすることで1)事業機会で使われるべき資金を訴訟費用で費やすような非効率的な資産運用を避けることができる。2)訴訟や仲裁費用支出の会計上の不利な取り扱いを避けることができる。3)EBITDAで有利な扱いとなり企業価値が増加する。4)訴訟費用支出による事業計画変動という不確実性を除去できる。

 

いまや訴訟ファイナンス市場は、より高度な紛争を対象とするようになってきており、資産を対象とするコーポレートファイナンスの色彩が強くなってきている。次の段階は、訴訟がファイナンス対象となる市場が形成されるのであろう。車両やオフィスビルがリースファイナンスの対象となるように訴訟もファイナンス対象となろう。

 

法的請求権は、その性質が偶発的ではあり、国際会計基準では資産とはされないが、現実には存在するものであり、証券化もできるし、担保にもなりうる。必要な変化は、企業に対して法的請求権が資産であることを認識させることである。訴訟のポートフォリオファイナンスを完全なテーラーメードのファイナンスとして提供できる訴訟ファンドはほとんどない。必要性からでなく選択肢の一つとして訴訟ファイナンスを提供することは、脆弱な財務内容の企業の訴訟にファイナンスをすることとは全く異なる。

 

企業が自分自身の単一の訴訟に訴訟ファンドを使う最大のリスクと考えられてきた理由とこれまで多くの企業が訴訟費用に外部からの資金調達をためらってきた理由は、訴訟ファイナンスの「プライシング=コスト」である。このコストが株主や取締役会に説明できるのか。これは訴訟ファイナンスの業界が考えるべき問題である。

 

訴訟ファイナンスについてよく言われる秘匿特権について問題はない。注意深いファンドや弁護士は、いつもこの問題に対処しており、秘密保持契約を結び交信を秘密にし、ファイナンスに関する秘密情報が第三者に漏えいしないようにしている。

 

よく指摘される訴訟のコントロールの問題は、単一の訴訟ファイナンスにもポートフォリオファイナンスについても議論される。しかし、信頼され、経験のあるファンドは、訴訟のコントロールを求めることはない。むしろ彼らは、訴訟手続きを通じてクライアントと共に働き、支援する。長年の訴訟や仲裁経験に基づき、弁護士とは異なる見識を提供することができる。従って、ファンドとクライアントの関係は、弁護士とクライアントの関係より深くなることもある。

 

基本的には、訴訟ファンドは受け身の投資家である。訴訟ファイナンスは、訴訟や仲裁を対象とするため法的ファイナンスと言われるが、コーポレートファイナンスとしてビジネス上利益のあるものである。訴訟ファイアンス業界は、企業クライアントに対して訴訟遂行のため、内部資金ではなく外部資金の活用を考えるよう働きかけることが必要である。訴訟予算の全額でなくてもその一部は外部調達による選択肢を企業に与えられるようになるべきである。

 

Corporate Counsel 2019/06/28
Nick Rowels-Davies
https://www.law.com/corpcounsel/2019/06/28/companies-move-away-from-necessity/