海外トピックス

2019年における訴訟ファンド5つの予測

2018年、訴訟ファンドは、業界の幅広い層で認知や利用が進んできている。2019年は、訴訟ファンドの業界としての成熟度が高まり、新たな法的および競争上の課題に直面することになるだろう。

2018年には、2週間おきに、新たな訴訟ファンドがファンドレイズしたというニュースがでていた。投資家の資金が一気に訴訟ファンドに流れ込み、そのメリットはより具体的に明らかになってきている。訴訟当事者にとっては、資金の選択肢が幅広くなり、一方、法律事務所は、収益を実現する方法論を手に入れた。業界全体としては、健全な競争によって資金を活用する可能性も高まってきている。

しかし、多くの資金が訴訟ファンドに投入されることによる潜在的な懸念も明らかになってきている。クライアントの意志決定ではなく、利益を得ることを重視する力が働きやすい構造にあることや、訴訟と経済的リスクの複雑さをどう取り扱うかについて誰もが経験が浅いこと、弁護士が従わなければならない法曹倫理を理解していない出資者の存在などである。

ウォールストリートは、訴訟ファンドの成長を歓迎している。株式市場、金利の上昇、経済全体に影響されない新しい投資対象としての訴訟の可能性を既に見出している。

米国における訴訟ファンドは、もはや初期段階は通り過ぎている。「David vs. Goliath」のケース(存亡の危機に立たされた「小企業原告」対「大企業被告」という構図)として訴訟ファンドは始まったが、今や主流ではない。今後、数年間で、全米50位(Am Law 50)の洗練された法律事務所は、クライアントに恒常的に訴訟資金調達のオプションを提示することになるだろう。こうした法律事務所は、いくつかの種類の訴訟をまとめたポートフォリオファイナンスを活用する信頼できる訴訟ファンドを利用していくようになるだろう。ポートフォリオは、必然的に必要とされる利益を高めるのに役立ち、投資者のインセンティブとクライアントのインセンティブとをよりよく一致させるように機能するだろう。近い将来には企業法務は訴訟防御にも訴訟ファイアンスを利用するかもしれない。

5つの予測

1. プレイヤーのさらなる増加

訴訟ファンドにさらに多くのプレイヤーが新規参入してくるだろう。専門的に訴訟を扱う訴訟ファンド業者の数は、現在の約20から約50へと倍増する可能性がある。ヘッジファンドは、引き続きさらなる資金を訴訟ファンドに投入していくだろう。市場が飽和をするにはままだ時間がかかるとみられている。

2. 被告側への訴訟資金ファイナンス

被告側への訴訟資金ファイナンスは、市場の重要な部分として認識されるようになるだろう。企業法務部門による訴訟リスクの日常的な資金調達はまだ時間がかかるだろうが、革新的な企業は業界をリードする企業にリスク移転をするメリットを見出し始めている。被告として訴訟への支出を正確に抑えるため、法律事務所と訴訟費用を按分する法律部門を想像してみてほしい。あるいは、法律事務所は、訴訟ファンドの助けを借りて、訴訟の費用の上限を決めるような定額報酬を被告企業に約束する可能性がある。その対価として法律事務所は、当該クライアントとのインセンティブをさらに調整するために、合理的に、将来、より多くの訴訟案件の受任と成功報酬を当該クライアントに求めることも考えられる。更に、第三の方法として、原告になる訴訟と被告になる訴訟を合わせて訴訟ファイナンスの対象とすることも考えられる。

3. 訴訟資金の調達において初期開示はない見通し

訴訟ファンド利用の初期開示が連邦裁判所係属の訴訟の開始時に行われるべきかどうかについて、民事規則に関する連邦諮問委員会による少なくとも一年の調査が行われる可能性が高い。(1つの重要な論点は、訴訟資金調達が原告または被告の訴えの利益に関連する可能性が高いかどうか、およびそれが比例しているかどうか)

2014年、米国商工会議所の司法改革研究所は、訴訟資金開示を強制する民事訴訟連邦規則の規則26の改正を提案した。当時、連邦諮問委員会は、規則を作るには早すぎると判断したが、「第三者による資金調達によって提起される問題は重要である」と指摘した。しかし、それらは完全には特定されておらず、慣行がさらに発展するにつれて変化する可能性がある」という見解も示している。さらに、同委員会は、裁判官は第三者による訴訟資金調達に関する情報を得る権限を持っているとの見方も示していた。

2017年9月、連邦諮問委員会は、複数州をまたがる訴訟手続のルールを作成する小委員会を結成したと報じた。「その他の状況で」資金拠出の問題にも取り組む予定であるとされていたが、報告書では、「小委員会の作業は非常に早い時期に行われている。言い換えれば、資金調達の初期開示に関する規則の変更は、来年完了する可能性は低い」と書かれていた。

4. 自己規制

倫理的かつ持続可能な資金提供の慣行をつくるための訴訟ファンドの団体が結成される可能性が高い。ICCA-Queen Mary Task Forceが、国際仲裁に資金を提供して、英国のベストプラクティスの規範になりつつある。同グループは、英国の自己規制資金調達機関である訴訟資金調達協会(Association of Litigation Funders)へのレポートで、「クライアントの保護を重視している」ことを強調している。

5. ポートフォリオ資金調達に関する議論

訴訟ファンドなどの非弁護士と弁護士の間の手数料の配分に関する堅実なガイドラインを検討することが必要になってくるだろう。

ABA法曹倫理のモデル・ルールのルール5.4(a)は、現在、非弁護士との法的手数料の按分を禁止している。2017年8月に始まった議論では、ニューヨーク市弁護士協会は銀行の信用与信枠供与が規則5.4(a)に違反していないとしたが、資金提供者とのポートフォリオ取引は認めなかった。しかし、協会の意見は、議論の始まりに過ぎず、今後撤回または再検討される可能性があるという噂もある。

2018年には、訴訟ファンドに多額の資金が流入し、訴訟担当者を支援する力が急激に高まった。2019年は、より慎重な成長が見込まれており、資金提供者は被告側への資金提供などの新しいアプローチの開発を行い、法律事務所はこれらの新しいファイナンスツールを使用してクライアントにアプローチしていくだろう。

Five Predictions for Litigation Finance in2019