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「訴訟ファイナンス」: 法律事務所は、ヘッジファンドのビジネスモデルを変えられるのか?

ヘッジファンドは、訴訟ファイナンスで膨大な利益を上げているが、法律事務所も同様の利益を上げることができるのか?

訴訟ファンド市場の成長性に関して多くの報道がある。訴訟資金提供者は記録的な利益を上げており、パイの一部を求めて新規参入者が増加している。業界の世界的な拡大は、高い価値が見込まれる法的紛争の資金調達方法に重大な影響を与えているが、現時点では今後も潜在的な資金需要は十分にあると多くの人が感じている。訴訟費用の支援を必要とする原告にとって、訴訟ファンドの活用は、決して唯一の方法ではないものの、かなりコストがかかる可能性がある。資金提供者が成功時に得る利益は、投資した資金に加え、投資額の3倍にもなることがある。

このような事態は、法律事務所が、自ら案件で得られるはずの成功報酬をいつまでもヘッジファンドの収益モデルに譲ってしまっていいのかという疑問を提起する。法律事務所が代替的な報酬支払方法として成功報酬を競争的に提供することで、法律事務所と訴訟資金提供者との収益分配の争いが増加するのだろうか?

市場における緊張関係

法律事務所、原告、訴訟資金提供者たるヘッジファンドの間には一定の緊張関係が存在している。法律事務所は、訴訟ファイナンスが利用されることで、訴訟資金提供者により原告の利益に相反して高い成功金が取られていると感じるかもしれない。しかし、一方で訴訟資金提供者は、持続可能なビジネスを実現するための高い収益を実現するために、ポートフォリオを組んで選択的アプローチで運用する必要があると主張している。しかし、金額だけが問題ではない。多くの原告にとっては、第三者からの資金調達手続きの複雑さよりも、法律事務所と成功報酬の取り決めを交渉するほうが簡単だと感じるだろう。原告は訴訟ファンドの資金調達手数料が高いと考えているが、懸念はそれに留まらない。訴訟における主導権や意思決定権を失う恐れ、秘匿特権喪失、情報の漏洩などのリスクを抱えることにもなる。

法律事務所の役割の著しい変化

訴訟ファイナンスによって、依頼人は、案件依頼に競争入札の方式を取り入れることが可能になり法律事務所の案件獲得の方程式は著しく変わったと言える。このため弁護士報酬を時間給で請求する以外のサービスの提供方法を模索する柔軟性が、法律事務所にとりますます重要になってきている。ほとんどの原告は、弁護士業務の質を下げるような報酬の値下げには興味を示さない。

一方、法律事務所は、あえて第三者の訴訟資金提供者に頼らないで、顧客たる原告の主張を信頼し、且つ、敗訴リスクを保護できることを示す報酬支払方法を提示できる法律事務所が、いくら巨額の成功報酬があったとしても、依頼人から案件を獲得できるようになってきている。その結果、法律事務所は、条件付き、または、成功報酬の発生や繰延支払い方法に同意することで優良案件ではリスクのシェアを受け入れるプレッシャーを受けるようになっている。

活用されるWIP保険

多くの法律事務所は、成功報酬に適した訴訟に遭遇することが多々あるものの、報酬を得られるまで全額費用を負担するのは、経済的には好ましいことではないと感じている。成功報酬となる契約は多くなる一方で、法律事務所は成否に依存した報酬を得ることにあまり前向きではない可能性もある。この問題に対する最近の解決策が、WIP保険の開発である。

WIP保険は、法律事務所が成功報酬を約束し敗訴した場合に法律事務所に対し一定の金額が補償される保険である。この種の保険は欧米では普及している。成功報酬類似の支払いが禁じられているイングランドとウェールズでは訴訟の結果によらず法律事務所が一定金額を得ながら依頼人に対しては成功報酬を法律事務所が提示できるという付加価値がある。訴訟が敗訴した場合は、保険会社は発生した手数料の合意された部分(通常は50%)を法律事務所に償還する。訴訟が勝訴し、法律事務所が成功報酬を得られた場合は、回収された成功報酬から保険料を保険者に支払う。保険料は、訴訟が成功し、法律事務所が十分な手数料収入を生じる場合にのみ支払われる。 つまり、WPI保険は、収入予測にあたり予算に確度を与えるとともに成功報酬条件を提示するに安心感を与えるものである。

成功報酬

法律事務所は、訴訟資金調達を活用しながら、成功報酬のアプローチを採用することはあまり想定されていないものの相互に排他的である必要はないと言える。法律事務所はWIP保険の恩恵を受けることができ、原告にキャッシュフローを提供するための手助けを行うこともできる。原告のプレッシャー、魅力的なリターンの見通し、WIP保険の快適性の組み合わせが、法律事務所の成功報酬額をさらに引き上げる可能性がある。法律事務所の信頼性が高まるにつれて、訴訟資金提供者との交渉でバーゲニングパワーを発揮することも想定され、より広い範囲の訴訟に関してサービスを提供することや新たなビジネススキームを今後生み出していく可能性もある。

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