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訴訟ファイナンスの未来に関する4つの質問:急成長する訴訟ファンドは、どこに向かうのか?

訴訟ファイナンスは、どのようにして今日の状況にまで到達したのか?
そして、これからどうなっていくのか?

ウォール・ストリート・ジャーナルの法務編集責任者であるAshby Jones氏は、最近N.Y.で開催されたディーラーズ・フォーラムの基調講演で、これらの疑問に答えました。

長年にわたり、弁護士として活躍し法曹界の意見をリードしてきたJones氏は、「訴訟ファンドのブームに正直驚いている。訴訟ファンドがこれほど大きくなるとは想定していなかった」とまず告白しました。

Jones氏が訴訟ファンドに対して当初懐疑的であった理由は何か?

第一に、これまでの事例から考えたときに法律はイノベーションとの親和性が低いことです。訴訟ファンドが登場した時に、適法性が担保される可能性があったものの、従来のように法曹界はイノベーションを拒むだろうという見通しでした。第二にコモンロー上のMaintenanceやChampertyの概念は、訴訟ファンドが第三者の立場で訴訟に関わることを制限すると解釈されるからです。第三としては、成功報酬に基づいて訴訟を行う堅実な原告が多いことを考えると、訴訟ファンドの必要性があるとは断言できなかったからです。

これ以上間違えるわけにはいかない、訴訟ファンドは活況を呈している―Jones氏

では、何が起こったのでしょうか?イノベーションの観点からみると、法曹界業界全体として、イノベーションを取り入れる必要はありませんでした。しかし、少数の革新者を必要としていたと言えます。MaintenanceやChampertyのような法原理の観点に関しては、弁護士は禁止や制約を回避するためのモデルと取引構造を開発し、米国裁判所はそれらの大部分受け入れました。さらにこうした動きの中で、市場に訴訟資金の十分な需要が存在することが判明しました。

Vannin Capitalの調査によると、2016年には世界で、$800~ 900M相当規模の訴訟ファンドが設立されています。これはこれまでの訴訟資金調達の成功を反映した膨大な金額です。しかし同時に、世界中で訴訟に費やされる金額のわずか4%に過ぎず、成長の余地はまだ残っています。訴訟資金調達は、2012年から2106年にかけて年率約40%で増加し、今後数年間で20%から30%の割合で成長を続けると推定されています。

資金調達者の数は急増しており、現在50社以上の訴訟ファンドが存在しています。ヘッジファンドも同様に投資しており、億単位の資金を訴訟ファイナンスに投入し、過去16ヵ月間で、ほとんどすべての主要な投資を上回る優れた収益を得ています。また、Sara Randazzoが7月に発表したように、これらの機会に惹かれて、法律事務所を離れて“法律業界の新たなHot Job”である訴訟ファンドで働くことを望む弁護士も増えてきています。

訴訟ファンドにはどのような未来が待っているのか?を考えるための4つの質問

1.訴訟ファンド市場は飽和しつつあるのか?

たくさんの新しい資金提供者が参入し、多くの資金が投入されているものの、その資金量を受け入れるだけの訴訟や事件が存在しているのでしょうか?Jones氏は「これまでの見通しでは肯定的だ。少なくとも今のところは」という認識を示しています。訴訟ファンドに初めて目を向けるという原告や請求者が依然として多数存在するというのです。

Jones氏「しかし、どれだけ成長の可能性があるのか?といえば、それは言うのが難しい。訴訟ファンドが単一の原告で企業間取引の訴訟を対象とし続けるなら、成長は困難になる可能性がある。なぜならこれらのケースの数は限られているからだ」

また、新しく訴訟ファンド市場に参入するには、すばらしい時期とは言えないかもしれません。訴訟ファンド市場に参入すると、リターンは「一定の幅に収まる」可能性があります。ですから、訴訟ファンド側も投資と収益獲得のお金の流れのパイプラインを作ることが重要です。しかし、激しい競争を考えれば、新しいパイプラインを開発するのは簡単ではありません。先行プレーヤーはパイプラインを持っていますが、新しい参入企業は独自のパイプラインを開発することが難しいでしょう。

 

2.地理的に拡大の余地があるか? もしそうなら、次にどこを見るか?

英国やオーストラリアなど、訴訟ファンドに関する事例が蓄積されつつある地域では、飽和しているようにも見えます。最近は、香港やシンガポールの動向に注目が集まっています。香港とシンガポールが、国際仲裁のための訴訟ファンドの活用を承認したためで、今後非常に有利な展開になる可能性があります。

しかし、それ以外の地域でのブームや新たな動きはあまり見られません。残りの市場はずっと小さく、例えば、カナダの訴訟市場全体は、カリフォルニア州の訴訟市場全体と同等ではないのです。ラテンアメリカと南米での訴訟ファンドの活用機会を探るという見方もありますが、まだ完全に機が熟しているとは言えません。今のところ、訴訟ファンドはやはり米国が主要市場だと言えるでしょう。

 

3.訴訟ファンドは初期モデルを革新できるのか?

初期の訴訟ファンドは、企業間取引で単一の原告である訴訟に対象を絞っています。他の種類の取り決めが現実的にあるかといえば、明言できません。

被告側への訴訟資金の提供を行う際の方法論については議論がなされていますが、現実的に採用できているものはありません。訴訟ファンドの役員の1人がJones氏に「被告側への訴訟資金の提供スキームを見るけることは、業界にとっては開けられていないナットのようなものだ」と語ったと言います。

また現在は、単一案件としての訴訟ではなく、訴訟ポートフォリオに資金を提供する取決めに重点が置かれています。しかし、裁判所はまだこれに対して明確な見解を示していません。(ニューヨーク州裁判所からの最近の意見は、ポートフォリオアレンジについての倫理的な問題を提起しています)。

近い将来により有望な、1つのイノベーションとして訴訟ファンドの流通市場が考えられます。二次的な流通市場は、訴訟が特定のタイミング(例えば、却下・棄却の申立てを免れた時)で、あるファンドが別のファンドから権利を購入したときに生じます。巨額の資金提供者は既に小規模の資金調達先に権利を分割して売却していて、流通市場での取得権の一部を購入することは、業界の新しいプレーヤーにとっては新たな市場参入方法を提供するでしょう。

 

4.規制はどのように訴訟金融に影響を及ぼすか?

この論点に関する見解は様々です。業界が倫理ガイドラインの策定を通じて自己規制できる一方、他の企業はより多くの外部規制を期待しているとの見方もあります。訴訟ポートフォリオに関する取り決めは論点の1つですが、規制活動の最大の論点は、おそらく情報開示についてです。当訴訟の事者は訴訟の開始時に資金調達の手配を開示する必要があるのでしょうか?

米国商工会議所は、利害の衝突を避けるために情報開示が必要であると主張し、より多くの情報開示を求めています。一方、資金提供者は、情報開示は不必要であり、資金提供者を付随的な訴訟や法的解釈の場に引きずりだしたい反対派の要望によって情報開示の動きが推進されていると主張しています。

訴訟ファンドが増加するにつれて、より多くの開示が求められています。いくつかの裁判管轄区域では、開示が必要な現地ルールが採用されており、特定の訴訟では既に情報開示が求められています。

Jones氏は利害の衝突が本当の問題であるかどうかについて疑問を呈しましたが、情報開示に反対することは、訴訟ファンド業界が隠すべき何かを持っているように見えることには注意が必要だと述べました。

業界のこれまでの急速な成長と今後の継続的な成長を考慮すると、情報の隠蔽は、訴訟ファンドの活動をより困難にする要因になりえます。だからこそ、訴訟ファンドが公の舞台に出て、世界的な訴訟での主導的役割を受け入れる時が来たと言えます。

 

4 Questions About The Future Of Litigation Finance
David Lat:Above the Lawの創設編集者、元ニュージャージー州連邦検察官